HP OmniBook 7 AeroのH.265ハードウェアエンコードは無効化されている【DELLも同様】購入前に知っておくべき罠

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前回の記事で書いたように、俺はChromebookの動作の軽さに驚き、Apple シリコンの速さに惹かれ、最終的にHP OmniBook 7 Aero 13(Ryzen AI 7 350 / 32GB / 1TB)をコスパ最強マシンとして選んだ。

価格は149,780円。後に数万円値上がりするから、あのタイミングで買ったのは、小さくない勝利だった。

しかし——。
買ってから、知ってしまった。

H.265(HEVC)ハードウェアエンコードが使えない… 動画編集で気づいた異変

動画のエンコード作業をしようとした。
エンコードソフトを開き、出力設定を確認する。H.265のハードウェアエンコード……
……ない。
グレーアウトではない。プルダウン自体、存在していない。

おかしい。Ryzen AI 7 350にはAMDのVCNエンジン(Video Core Next)が搭載されているはずだ。ハードウェアエンコードができないはずがない。
「おかしい。なぜだ」
調べた。調べて、調べて、調べた。

なぜ使えない?HPがH.265ライセンス料節約のため意図的に無効化

そして、わかった。
HPが意図的に無効化しているのだ。
H.265(HEVC)の再生・エンコードには「HEVC Advance」などのライセンス料が発生する。

……その金額、1台あたり0.24ドル。
日本円にして、およそ36円だ。
36円。
自動販売機の釣り銭トレーに置いてあっても、拾うか迷うような金額だ。
それを、HPは惜しんだ。

この件についてHPは公式に認めている。「2024年に『600 Series G11』『400 Series G11』『200 Series G9』を含む一部のデバイスでH.265のコーデックハードウェアを無効化した」と声明を出した。影響を受ける場合はサードパーティ製ソフトウェアを使えと言う。

……サードパーティ製ソフトウェアを使え。
俺は15万円のPCを買ったんだぞ。

大量に売れば積み上がる——それはわかる。100万台売れば3,600万円だ。メーカーの論理としては、理解できなくはない。

しかし俺は、15万円のPCを買った人間だ。
その俺から、36円を惜しんだのか。

……HPよ。お前は本当に、そういう会社なのか。

HPだけじゃない:DELLも同じことをやっている【購入前に要確認】

さらに調べると、これはHPだけの話ではなかった。
DELLも同様に、H.265のハードウェアエンコードを無効化しているモデルが存在する。

……業界ぐるみか。
メーカーにとっては「コスト削減」の一手。だがユーザーには何の説明もない。
スペック表には「Ryzen AI 7 350搭載」と堂々と書いてある。しかしドライバで殺された機能のことは、どこにも書いていない。

これからHPやDELLのノートPCで動画エンコードをしようと考えている人は、必ず購入前に確認してほしい。

H.264(AVC)とH.265(HEVC)、ハードウェアとソフトウェアの違いを整理する
……少し落ち着け。怒ってばかりでは読んでいる人に申し訳ない。整理しよう。

方式速さCPU負荷発熱
H.264 ハードウェア◎ 速い
H.265 ハードウェア◎ 速い
H.265 ソフトウェア△ 遅い
AV1 ハードウェア◎ 速い

AV1のハードウェアエンコードは使える。H.264も使える。ただしH.265だけが、ない。
「AV1に移行すればいい」という意見もある。それはわかる。ただ、H.265が現役で動いている現場はまだ多い。

編集ソフト、納品先、放送業界……。その業界にいるわけではないが、選択肢を奪われるのは痛い。

結局AV1ハードウェアエンコードで妥協する

H.265は使えない。ならばAV1だ。

AV1はライセンスフリー。だからHPも殺していない。Ryzen AI 7 350のVCNエンジンはAV1のハードウェアエンコードにはちゃんと仕事をする。……エンコード速度は、速い。それは認める。

AV1は次世代コーデックだ。圧縮効率も高い。未来はAV1だ、という意見もわかる。

だが俺は、H.265を選ぶ自由まで奪われたくはなかった。

H.265が必要な現場はまだある。納品先、編集環境、互換性——。選択肢がないのと、選択肢があって選ばないのとでは、まったく意味が違う。

エンコードだけじゃない。H.265の再生支援(デコード)まで殺されている

……待て。まだある。

H.265の動画を、再生しようとした。
再生ソフトを開く。H.265のファイルを読み込む。
CPU使用率が、跳ね上がる。

……ハードウェアデコードも、殺されているのか。

そうだ。HPが無効化しているのはエンコードだけではない。デコード——つまりH.265動画の再生すらも、CPUに丸投げされる。

H.265のファイルを再生するたびに、Ryzen AI 7 350の負荷が増す。
発熱する。ファンも回る。バッテリーが削れる。
1kgの軽量ボディが、36円のために、毎回消耗していく。

ハードウェアデコーダーはそこにある。VCNエンジンはそこにある。だが認識しない。動かない。

……HPよ。お前は本当に、そういう会社なのか。

H.265を使うならメーカー選びから始めろ…!

「Ryzen AI搭載で動画エンコードも爆速!」という記事を読んで買おうとしているなら、一度立ち止まってほしい。

AV1ハードウェアエンコード → 使える
H.264ハードウェアエンコード → 使える
H.265(HEVC)ハードウェアエンコード → HPとDELLは制限している場合あり
H.265(HEVC)ハードウェアデコード → HPとDELLは制限している場合あり

……そして、これが一番大事な話だ。

HPは「2024年に複数のシリーズで無効化した」と発表した。具体的には600 Series G11・400 Series G11・200 Series G9が対象として名指しされているが、俺のOmniBook 7もその影響を受けている。

これはAMDだけの話ではなく、IntelのCPUを搭載したモデルでも同様だ。
DELLも「プレミアムシステムでは使えるが、標準・ベースシステムでは使えない」と声明を出している。つまり安い機種ほど切られるという構造だ。

……15万円のPCが、「標準システム」扱いだったわけだ。

HPとDELLの上位機種(クリエイター向け・ビジネスハイエンド)であれば制限がない場合もある。予算が許すならそちらを選ぶ手もある。

一方、ASUSとLenovoはクリエイティブ性能を前面に押し出しているメーカーで、基本的にH.265のハードウェアエンコード・デコードに制限をかけていないようだ。

そして——もうひとつ、言っておかなければならないことがある。
H.265さえ使えればAV1にはこだわらない、という人には、M5 MacBook Airという選択肢がある。

……そうだ。あの時、俺はMacに惹かれていた。

M5 MacBook AirはAV1のハードウェアエンコードこそ非対応だが、H.265は使える。ライセンス料をケチってユーザーの機能を殺す、などという発想はAppleにはない。

……Macにしとけばよかったかな。

動画編集をする人、H.265を日常的に扱う現場がある人へ——。

H.265が必要 → ASUSかLenovo、またはHP・DELLの上位機種を公式サイトで確認
AV1で完結できる → どのメーカーでも検討する価値がある
HPやDELLの普及帯 → 購入前に必ずH.265の動作確認を。公式が無効化を認めている

OmniBook 7は軽くて速くてコスパも良い、悪いマシンではない。
しかし、隠された制限がある。それを知った上で買うのと、知らずに買うのとでは、大違いだ。

……ひとつ、勉強になった。

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