ガイアの夜明け 再び、巨大“規制”に挑む!~「バター不足」さらなる闇~
≪番組内容≫
人気ケーキ店でバターが足りない!? 背景に巨大“規制”の存在が…
▽自由を求めた酪農家と農協の対決! 予想外の一手に若手の夢が大ピンチ▽絶品牛乳が酪農の未来を拓く
ある地方の、ケーキ店。ふんだんに使った「国産バター」が作り出す、上質な風味が人気だ。今、その「国産バター」が思うように調達できず、一部を輸入品に頼っているという。
ところがその輸入品、品質の割に価格が高く、ケーキ作りは困難を極めていた…。
スーパーには商品が並び、“バター不足”は解消されたようにも思えるが、消費者の目が届かないところでは依然、深刻な問題として影を落としている。
そしてそこにはやはり、バターをめぐる巨大な“規制”の存在が絡んでいた…。
2016年11月に放送した「巨大“規制”に挑む!~明かされるバター不足の闇~」では問題の一端を描き、それに立ち向かう人たちの挑戦を追った。今回は、「ガイアの夜明け」15周年の通年企画「ニッポン転換のとき」第三弾として、さらなる“規制”の存在を明らかにしつつ、もう一歩、バターの“闇”に切り込む。
2017/06/13 (火) 22:00~22:54
071 テレビ東京1
「GAIA」…それは 息づく大きな生命体。
混沌の時代にも 希望を見いだし
再生を果たして 未来へ向かう。
そこに きっと夜明けが やってくる。
この町で評判の洋菓子店
日曜日の午後 店を訪ねると
大勢の客でにぎわっています。
いちばん人気は このシュークリーム。
値段は1つ 130円。
皮はサクサク
中には カスタードクリームがたっぷり。
いろんな種類のケーキも。
目移りしそうです。
定番の苺のショートケーキは 335円。
ほとんどが 300円台と
手ごろな値段です。
地元の人たちに愛されるこの店の社長
創業以来続けてきたことがあります。
原料は国産にこだわってきました。
そのために今 深刻な問題が。
国産バターが十分に調達できなく
なっているというのです。
それを補うのが これ。
国産の代わりに輸入バターを使っていました。
しかし ここにも問題が。
庄谷さんが使いたい
なぜ そんなに高くなるのか?
実はそこに
知られざる組織の存在が。
国家が独占輸入する、バターの「巨大利権」
このビルに入っているのが…。
エーリックは まず 入札によって
輸入業者から最も安い価格で海外のバターを買い取ります。
それを再び入札にかけ今度は最も高い価格で
販売業者に売り渡します。
もともと安い輸入バターの価格を引き上げることで
国産バターの値崩れを防ぐのが目的だといいます。
しかし…。
取材を進めると入札に参加した業者から
意外な話が。
なんと輸入バターは売れ残って
余っているというのです。
ここはエーリックが輸入したバターを
保管する倉庫。
菓子店など本当に欲しいところに
行き渡っていないのか。
エーリックが定期的に開くバターの情報交換会。
トップの理事長は宮坂亘 氏。
エーリックを所管する
農林水産省出身です。
典型的な天下り先という指摘も。
番組では エーリックにカメラでの取材を何度も申し込みましたが
返ってきたのは 1枚の文書。
正確を期すためカメラインタビューを断る内容でした。
そこで 農林水産大臣にバターの現状について聞くと…。
価格も量も問題ないとする国側。
しかし 庶民の生活には
異変が起きています。
この春も含め 家庭用のバターは
値上がりを続けていました。
バター不足や値上がりに打つ手はないのでしょうか?
バター不足の解消に挑む 1人の男。
そこに立ちはだかる厚い壁の正体とは?
一方 巨大組織と戦う 若き酪農家。
「ニッポン転換のとき」 第三弾。
規制に挑み自由な取り引きを目指す
開拓者たちの戦いを追いました。
酪農家が生産した生乳はどうやって私たち 消費者のもとに届くのでしょうか?
牛から搾った生乳のほとんどは
まず 指定団体と呼ばれるところに
買い取られます。
そして そこから各乳業メーカーに卸されます。
この生乳を 各乳業メーカーが牛乳やバター チーズなどに加工し
私たち 消費者のもとに届くというわけです。
実は この指定団体 このように
全国に 10あるのですが
運営するのは すべて農協系の組織です。
そして 生乳を指定団体に
すべて出荷した酪農家だけが
補助金を受け取れる仕組みに
なっています。
結果として 今は日本の生乳の ほぼ すべてを
農協系が独占していると いう構図になっています。
こうした現状を変え
生産者が自由に 生乳を販売できるようにしようと
動き出したところがありました。
それが こちら MMJ。
ミルクマーケットジャパンという企業です。
MMJは 指定団体よりも高く生乳を買い取ります。
そして 少しでも安く乳業メーカーに卸すという
新たな取り組みを始めたのです。
以前 「ガイア」でもお伝えしたこのMMJの取り組み。
国と農協が作り出す 大きな規制に挑戦していましたが
その後 直面したのは更なる壁でした。
バター不足を解消を阻む闇 用途別入荷
牧場にいたのはMMJ 茂木社長。
酪農家から生乳を買い取る
民間の卸売り業者です。
うまいですね。
この日は 新しい契約農家が MMJに初めて 出荷するところでした。
バンザイ!(一同)バンザイ!
MMJに出荷先を変えることで
酪農家は 売り上げが
大幅に アップするといいます。
群馬県 伊勢崎市。
こちらの建物の一角にMMJの本社があります。
小さなオフィスに
メーカーに
安く売ることができるのです。
かつて 茂木さんは
酪農家から子牛を預かって
育てる仕事をしていました。
そこで 経営難で廃業していく仲間たちを見て
付箋が びっしり貼られた本。
『乳業名鑑』とあります。
もしもし。
茂木さん
バター不足を解消しようと
作ってくれる工場を
探していました。
茂木さんの申し出にありがたい という返事。
ところが…。
指定団体とは酪農家から生乳を集めて
乳業メーカーに販売する組織。
全国に10あり すべて 農協系です。
生乳の流通を
ほぼ 独占しているため
そのライバルとなる MMJとの取引に皆 及び腰なのです。
茂木さんがやってきたのはこの町にある 中小メーカー
タカハシ乳業こだわりの乳製品。
すべて 農薬や化学肥料を使わない餌で育った
牛の生乳を使っています。
こちらのバターは
普通の2倍近い価格ですが
高級スーパーなどで
売れているそうです。
しかし 社長の高橋さんからは
意外な話が。
利益が大きいはずの高級バターが
赤字だというのです。
実は メーカーが 指定団体から原料の生乳を買う際
作る製品によって
買い取り価格が異なります。
例えば 牛乳を作るなら キロ 117円。
バターなら 75円で
買うことができます。
これは 用途別乳価と呼ばれ
乳製品を安定供給するために
国が作ったシステムです。
ところが…。
指定団体が 生乳をバター用の安い価格で売ってくれないため
採算が合わないというのです。
そこで 他のメーカーにも
話を聞いてみると。
関東のメーカーが生乳を仕入れているのは
農協系の指定団体 関東生乳販連。
50人足らずの組織ですが
取扱高は1,300億円に迫ります。
事実関係を確認するため
関東生乳販連トップの菊池一郎 会長に
話を聞いてみることに。
用途別入荷という国が作ったシステムは
機能していないことが
わかってきました。
バター作りを阻む闇 北海道 釧路市阿寒町でも
ここにも バター作りを阻む闇が。
茂木さん どうするのか?
一方 北海道 釧路市阿寒町。
巨大な規制と戦う
酪農家がいました。
福田さんが酪農を始めたのは
6年前。
脱サラして築40年の牛舎を買い取り
奥さんと2人でやってきました。
その福田さん経営規模を拡大するため
出荷先を指定団体からMMJに変えたいと考えたのです。
福田さんが生乳を出荷するのは指定団体のホクレン。
福田さんは 出荷先を
ホクレンからMMJに変えたいと
地元 阿寒農協へ
相談に行きました。
MMJに出荷できるよう
福田さんは阿寒農協 野村宏 組合長と粘り強く交渉を続けました。
その一方で
家族の生活を安定させたいと。
将来への巨大な投資にも
踏み切っていたのです。
あ どうも。
あ どうも。
3か月ぶりに
福田さんを訪ねました。
お元気ですか?
元気です。
福田さんの軽トラックについていくと
現れたのは巨大な建物。
全長100メートルを超える
新しい牛舎が完成していました。
ここが牛舎です。
費用は全額銀行からの融資。
自動で餌をやる
最新の設備も備えています。
一方 そのMMJ。
茂木さん ある資料を
手にしていました。
指定団体のホクレンが
組合員に宛てた文書です。
比で2円60銭って
書いてありますけどね。
生乳の買い取り価格を4月から
キロあたり
2円60銭引き上げるという内容。
MMJによると ホクレンが酪農家に支払う生乳の価格は
平均で キロ88円。
一方 MMJは92.5円。
4.5円高く買い取っていました。
しかしホクレンが 2円60銭引き上げると
差は グッと縮まります。
生乳の自由な取り引きを目指す茂木さん。
正念場を迎えていました。
阿寒農協の総会野村宏 組合長が切り出したのは・・・
険しい表情の福田さん。
やってきたのは町の公民館。
この日 阿寒農協の総会が
開かれることになっています。
福田さん 2日後に出荷先を
MMJに切り替えると
農協に知らせていました。
この総会で まさかの事態が。
福田さんを追って
会場に入ろうとしたとき。
他の報道は入っているのに
TVはダメだって。
なぜか 「ガイア」のカメラだけ
止められました。
居合わせた酪農家が。
結局 中には入れませんでした。
そして 総会が始まると
農協の幹部が
予想外の提案をしたのです。
阿寒農協 野村宏 組合長が切り出したのは
賦課金という新たな仕組みでした。
生乳の出荷量に対し 組合員から
キロあたり 50銭を
徴収するというものです。
農協に出荷しなくても
賦課金を支払う義務がある
というのです。
(賦課金を支払わないと農協から除名処分)
これには他の農家からも
反発の声が。
地元の新聞は阿寒農協が提案した賦課金に対し
出席者の半数近くが反対したものの
可決されたと報じました。
5時間に及んだ大荒れの総会。
いいですか ちょっと計算しても。
福田さん 賦課金は
いくらになるのか。
月々 約10万円。
月に10万円
農協に支払うことになります。
そこで阿寒農協 野村宏 組合長に直接 話を聞くことに。
福田さんが
MMJに出荷することに対して
どう お考えですか?
・・・・(無言)
組合員の味方ですか。
はい。
規模を拡大して頑張ってる農家は
応援しないんですか?
してますよ。
してるんでしたら
福田さんがMMJに出荷することをどう考えていますか?
よろしいんじゃないですかさっき答えたでしょう。
どんな不利益もないってことでいいんですか?
はい。
何もないですか?
ないですよ。
お疲れさまでした。
はい どうも。
突然 導入した賦課金について
組合長から説明を聞くことは
できませんでした。
2日後の
福田さんがMMJに初めて出荷する日です。
茂木さんも
群馬から駆けつけてきました。
指定団体からMMJに切り替えると
福田さんの売り上げは
年間2,000トン出荷した場合
600万円ほど アップします。
地元の酪農家も集まっていました。
福田さんの生乳は岐阜県の乳業メーカーで加工され
中部や関西で
牛乳として販売されます。
(一同)バンザイ バンザイ バンザイ。
賦課金の問題は
まだ結末が見えません。
しかし。
一方 バター不足の解消に挑むMMJの茂木さん。
意外な一手を
繰り出そうとしていました。
カギを握るこの男いったい何者なのか?
“規制”との決別…ニッポンの牛乳は世界で売る!
海外で評価されている日本の農産品。
なかには かなりの高値で販売されているものもあります。
例えば 以前 「ガイア」でも取り上げた宮城県山元町の
IT技術を駆使して作られています。
香港やマレーシアなど5つの国に輸出され
現地では
続いては こちら。
宮崎県串間市のさつまいも。
国内では廃棄されがちな小ぶりのいもを
おやついもとしてブランド化しました。
こちらも現在台湾 香港 シンガポール タイに輸出。
現地でも日本製を打ち出すため
このままのパッケージで売っているということです。
現地では
他にもあります。
国内と比べるとかなりの高値がついています。
ここまで値段が上がるんですね。
そして今巨大な規制を飛び越えて
酪農の分野でも 海外展開しようと動き出した人たちがいました。
この町にあるスーパー
この店で今 売れに売れている牛乳があります。
その名前は北海道 別海のおいしい牛乳。
大手メーカーの牛乳は
税込で 230円から250円。
一方の
別海のおいしい牛乳は 178円。
50円以上 安いのです。
実は この牛乳
北海道 東部に位置する 別海町。
この町で酪農を営む…。
別海のおいしい牛乳の生みの親が
この2人です。
おいしさの秘密が この餌。
国産の牧草やとうもろこしなど
ほとんどの農家は農協から餌を買っていますが
2人は
独自の取り組みが もう一つ。
この茶色い牛。
全体の1割だけ 交雑種の
生乳を混ぜるのが味の決め手。
25年かけて ひたすら
牛乳の味を追求してきた中山さん。
しかし その努力は 長らく
報われることがありませんでした。
指定団体に出荷する場合
各農家の生乳は混ぜられ
乳業メーカーに販売されます。
酪農家が努力しても
牛乳の味は
均一になってしまうのです。
そこで2人は
自分たちの牛乳を
別海のおいしい牛乳というブランドに
することができたんです。
別海のおいしい牛乳の生産者島崎さんの牧場に
外国人の姿が…。
彼らは 酪農大国オーストラリアから来たコンサルタント。
そこには MMJの茂木さんの姿も。
壮大なプロジェクトが
動き出そうとしていました。
仕掛け人は この人…。
質の高い日本の牛乳に注目し
ビジネスができないかと
やってきたのです。
一方 島崎さんと中山さんも
別海のおいしい牛乳の海外展開を
独自に進めていました。
最初に目指すのは 台湾。
団体が やってくれれば…。
指定団体に頼っていた頃は
牛乳の輸出など
考えたことすらありませんでした。
別海のおいしい牛乳が販売されるのが このスーパー。
これ全部 牛乳でしょう。
しかし そこには世界各国の
ライバルがひしめいていたのです。
そこで 日本の牛乳のすごさが
証明されることに。
テスト販売の様子を見に
スーパーへやってきました。
あった あった。
思わず笑みが。
手塩にかけた牛乳が棚の ど真ん中に。
やったね。 すごい。
しかし ライバルもひしめいています。
台湾産だけではなく こちらは…。
別海のおいしい牛乳は
1本 およそ720円。
いちばん高い値段が
ついていました。
台湾の牛乳の2倍の価格です。
赤ちゃんを連れた夫婦が
やってきました。
早速 呼び止めて
自慢の牛乳を飲んでもらいます。
どうですか?
そして 買ってくれました。
そのあとも…。
オーケー。
オーケー? ありがとう。
別海のおいしい牛乳が
次々と売れていきます。
棚に並んでいた30本は完売。
1か月のテスト販売の結果…。
そして 札幌でも大きな動きが。
酪農家から集めた生乳でバターを作ろうとしていた…。
訪ねたのは
領事が出迎えてくれました。
お疲れさまです。 どうぞ。
この日は
オーストラリアと結んでテレビ会議です。
相手は あのヒゲのコンサルタント。
テーブルに海外のバターを並べて
いったい何を始めるのか?
この日は オーストラリアと結んでテレビ会議が開かれます。
相手は あの…。
実は茂木さん
酪農大国 オーストラリアの製造技術を使って
日本にバター工場を作ろうと
動いていました。
茂木さんに協力するオーストラリアにも思惑が。
安くて質の高い国産バターを作る。
茂木さんの新たな取り組みが
始まろうとしていました。
今回 見てきたような規制が
必ずしも
悪いというわけではありません。
規制は 製品や価格の安定をもたらします。
しかし その一方で農産品が規制で守られているために
私たち消費者は より高い値段で
商品を買うことになっている
という側面もあります。
今回のような試みは
日本の農業を変える
大きな転換点となる
可能性も秘めています。
こうした機会をきっかけに
農業が更に強くなると
私たち消費者の大きなメリットにもつながりそうです。
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